事業団について

設立趣旨

 定款(目的)第3条に、『当法人は、国際介護人材を育成し、互恵を基本とする、国内外の介護人材の好循環システムの構築を目的とし、その目的に資するため次の事業を行う。』と記した。
 今、私どもはこの必要性を日頃の介護現場を運営する日常の中から切に必要であることを自覚し、本社団を設立するに至った。

Ⅰ.介護の専門化は時代の流れ

 昨年、私どもは次のような言葉を時に耳にした。「最後のフロンティア・ミャンマー」と。また、その意味の解説には常に東南アジア諸国で抜きんでた安価で良質な労働力の国ミャンマーと説明されていた。今私どもはこのような目で私どもの隣国である東南アジア諸国、とくにODA対象国を見る視点からの決別を急ぎたいものである。
 我が国は、21世紀になってヨーロッパ諸国につぎ公的介護保険制度を導入した国である。
 その必要性は、ヨーロッパ諸国のそれと違い、社会構造の基礎となっている農村型社会、あるいは生産あるいは生活の基盤であった「家族制度」の崩壊がもたらせた必然としての介護保険制度の導入であった。
 たしかに、近代資本主義の農村崩壊はイギリスのエンクロージャーから始まったのであろう。当時は領主や地主が農場の拡大のために農民を追い出し、追い出された農民は都市労働者となりその後の工場生産の労働力と化すサイクルを生み出したのであった。その結果が近代産業を支える社会構造となっていったのであった。
 そのことは日本に於いて必然であった。ただヨーロッパ諸国との違いは農村の生産構造の違いであり、日本のそれはヨーロッパのそれと違い米作農業であったことが日本の精神構造までもを、支える基礎であったためである。
 また、米作農業を支えるために家族労働であり、それが社会を支える基礎単位であったのであった。
 しかし、戦後の特に高度成長以降の社会変革は、その社会を支える家族制度をも解体したのであった。その為に以前は高齢者のお世話は家族で支えるのが日本の文化であるし、制度であったものが、維持することが不可能になり高齢者介護は社会全体で支える、またそれを保障する社会の基盤づくりとして公的介護保険制度が生まれたのであった。
 それは必然的に「介護の専門家」を生み出し、「専門家が行う介護」を生み出しました。
 一方、それは介護の専門職との職業的カテゴリーを作りだし、その必要性を今後、膨大な人員の不足を推計させるに至ったのです。
 日本の少子高齢化の進行はそれまでの介護を家族で担う社会制度から独立した個人の介護労働者がそれを担う構造を生み出した。皮肉なことにそれがあぶり出されれば出るほど絶対的不足の推計があぶり出されるのでありました。

Ⅱ.介護人材の好循環システムをつくるために

 そのことは介護力の絶対的不足が生じるため海外にそれを求めざるを得ないのは必然です。その必然の結果しかないと結論付けた件にも関わらず、人はある意味で不毛な論争を未だしているのが現状です。
 介護は心と心のつながりが大前提の為、日本語と日本の心が理解されなければならない。
 従って、外国人にそれを任せるわけにはいかない。との言葉をめぐっての論争であった。
 今、必要なのは日本あるいは日本文化に立脚した介護労働力などではなく、全世界にあるいは労働としての介護の専門技術なのです。
 それを今、日本の絶対的不足している介護の現状の中から見出し、体系化する努力のはずです。
 その努力のフィールドとして介護現場があるはずです。その現場の提供が「介護先進国」日本の役割なはずです。高齢化社会への倍加スピードは、アジア諸国はヨーロッパ諸国の何倍、いや何十倍のスピードで押し寄せてきます。
 今、単に労働力不足の充当としてアジア諸国をとらえ賛成、反対を議論している現状はそのスピード化から見れば陳腐化を必然とする議論なのです。
 なぜ故ならば、遠からずしてお送りだし国をも介護人材不足が目に見え、送り出す余裕がなくなるはずなのです。
 このような現状だからこそ不毛な議論と言えるのです。今、必要なのは単に単純介護労働力の輸入としての海外労働力の導入の時代に終わりを告げる必要なのです。
 先に記した「最後のフロンティア・ミャンマー」などと能天気な語らいに終止符をうつ必要なのです。
 「介護先進国」の責任として、「専門介護の確立」とその伝承と科学化なのです。
 今、私どもはこの必要性を介護現場の現状から強く感じています。
 そのために同じ思いをする仲間達との共同作業の必要性を強く感じております。
 まだまだ現場における実感の枠から抜け出ることができませんが、ただ、アジア諸国の人達と介護の専門性、あるいはその自立に向け協同作業を通して各国共通の「介護」が生まれ出ると思います。
 とりあえず、このような趣旨というより思いの段階ですが、同じ思いの方々と一つの集団を創り、その成長を通して互恵関係を結べる諸外国の介護施設と結びあい、それを基地とした介護人材の交流を創りだし、人材の好循環システムをつくり出したいものです。

 この命題を冠とした集団を皆さまとともに作りだしたいものです。