組織案内

ご挨拶

 私たちは昨年6月に「一般社団法人国際人材育成事業団」を設立いたしました。私たちは日頃から常に介護の現場に於いて介護を必要とする人達と共に日々を過ごす中から生まれる課題に対処することを旨としています。
 その中で今最大の課題は介護人材の絶対的不足です。また、未来予測として推計されている不足数を見ると絶望的な気持ちにもなります。
 介護人材不足は介護を必要とする人達の増加スピードを考えるとただ嘆いているわけにもいかず、また、その解決を時の政治に委ね座してみているわけにもいかない課題であります。
 私たちはこの現状に際し、「介護人材の国際的交流」を展開することにより一歩でも解決に近づける努力を実践することに致しました。
 現在、介護人材不足の現在は特筆して日本の問題でありますが、遠からず国際的問題となり、いずれの諸国においても課題として重くのしかかる問題であります。就中アジア諸国、とくに東アジア諸国では今後10年の物差しで考えれば現実的課題です。

 厚生労働省は介護労働力不足を海外の労働力あるいは介護ロボットの開発、普及等で補おうとし、技能研修生制度の介護職への拡大あるいは介護ロボット普及のための各種補助金の増額あるいは整備等を政策化しています。
 介護人材不足に喘いでいる私たちはこの政策に対し、藁をもつかむ思いで期待しつつ、一方で常に課題としている「介護の質の向上」も合わせて考えていきたいと考えております。
 現在、日本における絶対的介護人材不足の状況に関して、東南アジア諸国においては先行的に「日本語と日本的介護の教育」を実施し、技能実習生(介護)に関する日本側の解禁に備えている機関が多々あると聞きます。
 今、私たちが課題とし、あえて本社団法人を設立した最大の目的は、諸外国の介護職員ならびにその就労希望者に「日本的介護」とよばれている介護論、介護技術、介護方式、資格制度を含む介護制度等を体系的に整理し、それをもって確実に伝えることであり、その方法を模索し、実践を通して確立することです。
 なぜならば、介護保険法が成立した1997年前後においては、介護やその関連の仕事は若い人々に「やりがいのある仕事」だと人気職種の一つでした。しかし、その状況は長続きせず現在は再び「3Kしごと」としてのイメージが定着し、若い人たちから見放され、それが深刻な介護職不足をきたす原因の一つになっています。
 私たちはこの現状を含めて「日本的介護」と呼ぶことにしています。さもなければ、不足する労働力を仮に海外から求めたところで本質は何も変わらず、逆に課題、原因を不明確にするからです。 しかし、そうした状況にあっても心ある介護現場では魅力ある介護現場づくり、魅力ある介護方式あるいは介護論構築等の作業に懸命に取り組んでいます。そうした作業を通し、より良い「日本的介護」の確立を目指しています。
 それを伝習する場の提供として今実施されようとしている技能実習生制度の介護現場への拡大の流れに対し準備をしていきたいものです。
 なぜならば、我が国は「介護先進国」だからです。戦後の日本社会が作りだした高度経済成長社会は一方で少子超高齢化社会を世界一の速度で作りあげました。それは皮肉なことに家族労働としての介護から職業としての介護を産業として生みだし、「介護先進国=日本」をつくり出したのでした。
 また、東アジア諸国の急速な経済成長は早晩、日本と同様の社会制度を創りあげ、介護専門職が必要な社会となり、介護そのものも家族介護から社会全体で担う介護となるのは確実です。その意味で日本は「介護先進国」として、東アジア諸国との積極的な国際交流を展開し、共に学び合いつつ新しい介護の東アジアモデルの構築ができればと考えています。そこでの日本の役割は非常に大きくまた責任も重大だと考えます。

 このような問題意識あるいは状況認識にたち全国の介護現場から発する課題、そしてその解決を目的とした集団を創りあげることにしました。その課題は遠からず国際的課題となり、またその解決方法は必然的に国の枠を超えた手法を必要とする事が明確なため、私たちは「一般社団法人国際人材育成事業団」を設立致しました。どうぞこぞってご参加下さい。

2017年6月
一般社団法人 国際人材育成事業団
理事長 金澤 剛