千田透の時代を読む視点

総報酬割の導入により、今後の改定が更に厳しくなる

シルバー産業新聞2017年2月10日号

 

 政府が2017年度予算案を国会に提出した。社会保障関係費は、厚生労働省が当初要求した6400億円から4997億円に絞り込まれた。社会保障費の伸びを毎年5000億円に抑える方針に従った形だ。
 個別にみると、介護分野では、もっとも大きいのが介護納付金の総報酬割の導入であろう。現行の加入者割から総報酬割に段階的に移行させ、17・18年度に2分の1、19年度に4分の3、20年度に全面導入となる。長年の検討課題となっていたが、消費増税の先送りや負担能力に応じた公平な負担という観点から、導入を反対していた経済界が折れたのであろう。
 ただ、このことにより、今後経済界から「負担が増えるような施策を抑えよ」との声がこれまで以上に大きくなるため、今後の改定は更に厳しくなっていくことが予想される。
 高額介護サービス費では、現役並み所得者だけでなく、一般区分の人についても、今年8月から4万4400円に引き上げとなる。さらに、来年8月からは、利用者負担についても年金収入340万円以上の人は3割に引き上げられる見込みだ。
 ただ、3割負担となる多くの人が、高額介護サービス費の対象となり、上限である4万4400円で頭打ちとなるため、今後の話として、財政当局から高額介護サービス費の上限の更なる引き上げが求められることも予想される。
 そして、今回、財務省がまとめた「2017年度社会保障関係予算のポイント」の資料で特に違和感を覚えるのは、17年度予算の中に「18年度以降施行するもの」として、▽生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準の緩和及びそれに応じた報酬の設定(18年報酬改定)▽通所介護などその他の給付の適正化を検討(18年報酬改定)▽軽度者に対する生活援助サービスやその他の給付の地位支援事業への移行について、介護予防訪問介護等の移行状況等を踏まえつつ、引き続き検討し、その結果に基づき必要な措置(19年度末まで)▽福祉用具貸与について、商品ごとに「全国平均貸与価格+1標準偏差」を貸与価格の上限として設定(18年10月施行)――などが明記されていることである。
 特に軽度者に対する生活援助サービスやその他の給付の地域支援事業への移行については、介護保険部会で「時期尚早」として、見送りになったばかりであるにもかかわらず、なぜ「17年度予算のポイント」に記述されているのか。介護保険部会の審議を軽視した内容と言わざるを得ない。
また、福祉用具貸与についても、上限価格の設定を18年10月から導入とあるが、その内容は、商品ごとに「全国平均貸与価格+1標準偏差」を上限にするとなっている。著しく高額な貸与価格をなくす、外れ値対策が本来の目的であるはずなのだが、運用次第では、価格をどんどん引き下げることができる仕組みにもなる。安易な値引きが行われ、適切な供給ができなくならないように、制度導入の目的をはっきりとさせておく必要があるだろう。