「外国人介護職員教育検討会(仮名)の必要性」
~入職4年目で介護福祉士資格取得ができる職場つくりを目指して~
20223年10月21日
一般社団法人国際介護人材育成事業団
金澤 剛
はじめに
地方で、かつ高給優遇を言い出すことが出来ない介護施設は、「我が施設で普通に日常業務をしていれば4年後には介護福祉士資格を取れる仕事場です」と結果がはっきりとわかるキャッチコピーを掲げたいものです。
またそれを言い出すことが出来る仕事場のスタイルの創出を、今求められているようです。
介護福祉士資格取得は、「望めば日本に永住、望めば我が施設の幹部候補生、また必要があれば母国においての介護作り、日本語学校の先生、日本的介護の先生、送り出し機関の幹部候補者、企業などの日本語通訳などへの就職のチャンスが生まれます」と言える介護施設に我々が変身する必要が生まれてきているようです。
それではなぜそのような認識が生まれて来たのか、またそれを実現するにはどうすればよいのは、多少論を進めてみよう
⒈ 外国人介護人材採用5年目に現れた現状と課題
1.技能実習2号終了者のほぼ全員が転籍希望
*事業団は来春第6期生を迎える、
1期生2期生は技能実習1,2号終了し特定技能1号へ、過半は職場を変えることなく就労。
ところが、来年に技能実習2号を終了予定の第3期生は、一部を除きほぼ全員が職種、あるいは職場替えの転籍希望のようだ。
*介護職の平均在職年数が6年強、特に離職者全体の約7割が入職後3年以内の職員であることの現実から見れば何も不思議な事ではないが、ただその現実が介護職の恒常的不足を招いていて、それからの脱出の手段として、外国人人材の雇用制度を生んだことを考えれば、日本の介護事業所の在り方に警報をあらためて鳴らしていることを我々は自覚しなければならない。
*技能実習制度にて、実習中の職場替えが原則不可能であり、それが明けた3年後に転籍解禁、それを待っていたかのような転籍、この実態の表れでもあるが。
*本人たちの意識として、出稼ぎ目的である資金稼ぎと国への送金の必要性からと、合わせてまだ見ぬ世界への漠とした憧れの為などと、Z世代の共通感覚である、情報収集、情報拡散の素早さ広さを駆使した転職先探しの日常的手軽さなどの刺激。
一方での、介護を生かした就労先が母国では皆無である現状認識、
それに基づく将来への不安、などに起因しての結果であろう。
*そのことは、受け入れ側の希望、あるいは思い入れとは無関係に本人たちの意思があり、そのことを日常的に把握し対策を講じることが不足している事業団、あるいは受け入れ事業所の在り方に問いかけているようだ。
特にミャンマーからの介護職員は、軍のクーデターによる政治的、社会的、経済的混乱最中であり、特に若者たちは海外に仕事を求めるよりほかはなく、今やその希望の先が日本に向かっている、また母国の家族たちもその仕送りが頼りにしているのが実情である。
その結果、来日が実現できた人達は、一円でも多くの仕送りをするのが身に積まされた義務の様になっているようだ、
其のリアルな彼女たちの心情はどうも我々には本当のところで理解は難しいのが今回見え隠れしているようだ
*これを機会に反省しなければならないのは、事業団による「アンケート」という手段により本人たちの転籍意向を全体が知る事となった事実である。
本来ならば、日常的に管理、指導が義務づけられ、また人事管理上も業務として本人の意向、疑問など知り対策を講じなければならないのは事業所であるはずである。
*これは実習指導者、生活指導者などの相談指導担当者が選定されているが、それが機能していない証でもある。
*例え文化、言語など違う外国人人材であっても、努力して信頼を置ける間柄を作り上げることが必要であるが、それが出来ていない証明にもなっている。
*気付いていたにせよ、いないにせよ、結果的に対策を講じてこなかった風通しの悪い事業所の現実は、今後の為にも反省しなければなら。
*また今後の為にも、転籍者を出さない事業所と出す事業所の差異の原因も精査しなければならない。
*またあらためて、外国人人材を雇用する基本方針を確認しておく必要がある。
それは外国人人材を将来に向けて主要人材と捉えキャリアアップまで保証する人材としてとらえるか、
また単純労働力として、交換可能な3~5年の有期雇用の人材として、いわば「使い捨て」とらえるかの選択である。
この選択において半端な位置づけは結果的に外国人人材雇用もジリ貧を招くことは明白である。
*一方この事態は、あらためて介護人材の国際的循環の実現を目標にした我々にとって作風も含めて戦術を根底からの見直しを求められているようだ。
2.考えられるその要因と対策について(1)
*そもそも外国人介護人材の導入は、日常的介護人材の不足に対し、「藁をもつかみたい実情」からの脱出のため、途上国の若者の招聘に活路を見出し、それが実現すると、一安心。
その結果、人材不足を招いた根本原因である人事計画。人材育成などの企業運営の第一である人事能力の向上などに力を注ぐのをネグレクトし、結果的に破れ鍋に蓋の状態で矛盾の先延ばしにすぎない結果が現出して来たに過ぎない。
問題はもはや先延ばしにすることが出来ないのが露呈し始めたことに過ぎないのである。
① 転籍の自由化は時代の流れ
*技能実習制度は廃止し、新たな制度に改編することが決まり今秋にもその原案が公表されることになっている。
其の改正の目的は途上国の働き手を前近代的条件で就労させていることが可能な制度の改正である。
*その中の主要な変更事項の一つは「技能実習」との名目で就労先変更を認めないことの指摘に対する改正である。
この秋 検討主体である国の「技能実習制度見直し有識者会議」が結果を公表の予定である。
*漏れ聞くところによると,技能実習制度は廃止、新制度に改編、特定技能制度と制度統一化、しかし制度の急変は避けるため、案として
技能形成コース、期限付き就労コースなどに分け、働きながら技能を学ぶ制度
次に一定期間の中で就労する制度
次に一定の条件をクリアすれば定住、永住できるコースに分ける
などの案が検討されているらしい。
*あるいは、転籍は何らかの形で認める。その内容は同業種に限り1年後から可能、あるいは回数制限、あるいは地域規制などが語られているようである。
転職の自由は当然であることが前提のことでもあるが。
さてどうなるか?
② 条件付にせよ転籍可能制度は都市に働き手の集中を招く
地方にとって働き手の流出は変わらない
*技能実習から特定技能1号への移行者のうち県をまたぐ移行者は移行者のうち約4割である
特定技能1号外国人 130,915人
技能実習からの移行者 95,302人
県をまたぐ異動者 37,172人
(令和4年4月12日現在(出入国在留管理庁)
転出オーバーの目立つ都道府県は
北海道、青森県、岩手県、宮城県、岡山県、島根県、長崎県、熊本県、鹿児島県
転入オーバーの目立つ都道府県は
茨城健、埼玉県、千葉県、東京都、神川県、大阪府、兵庫県、京都府
などであり、これは移行が可能になってまだ間もない段階であり、かつ特定技能外国人も少数の段階であるため一部の産業への偏りなど有るが、全体的には今後の傾向を表している。
*これは、日本全体の人口流出と傾向が同じであり、たとえ外国人であっても流出、転入の条件、要因は同じであることを物語っている。
*このことは、人材不足に喘ぐ地方が、その穴埋めとして外国人人材を招聘しても定着することなく日本人の若者同様に都市に流出することを表している。
*さてこのそれぞれの要素を踏まえ、人材の定着、拡大を実現するにはいかなる対策を実施すればよいのか、今あらためて問われている。
そのことはもはや結論が出ているのかもしれない、
なぜならば、たとえ外国人であっても事業所に定着発展を実現するには日本スタッフと全く同様であることなのである。
*その意味で外国人介護スタッフも日本人介護スタッフと同様な対策を求められている との表れであり、もはやそれを制度で規制することが出来ず、本質的な人事管理対策 が求められている。
3.考えられる要因と対策について(2)
① 外国人介護職員教育の指針が不明
*当初、スタッフ不足の数合わせのため、途上国の若者に依存
*制度として「外国人技能実習制度」後に「特定技能制度」を利用
「介護の特性から誰でも就労が可能」のため、単純労働者に対する育成と同様な手法で開始された
*したがって、受け入れ事業所の過半は、育成方方針を考えることなく、また施設独自の教育システムを取り入れる事も無くただ、例えば作成が義務つけられている「技能実習計画」などは、実際は監理団体が申請のために、安易に厚労省モデル「技能実習計画」を自動的に適用し、受け入れ事業所もそれに依存の現状。
*結果的に施設の教育指針が入り込むことなく1号2号終了
*結果的に、外国人人材は在留許可の方便としての介護を位置づけ、また雇用側も数合わせとしての位置づけの域を出ることがなかった。
そのことは、外国人人材側は、仕事が介護でも飲食でも工場労働でもよかった、ただ、給料などの諸待遇、都会、田舎などの環境などが選択の基準になり、また母国において出国のしやすさなどが職種の選定の理由に過ぎず、技能実習の目的である、帰国後のための技能の取得などは皆無に近かったことが証明される現状である。
特に、母国がミャンマーなどの人材は帰国しても介護の職場などなく、ただあるの「お世話」の仕事だけで、まったく日本の介護現場で培う技能やそれに見合う賃金を保証する職場はないのが解り、帰国後のことを考えると職種の選択の幅を増やせざるを得ないのである。
② 中長期的キャリアプログラムの不在
あるいは介護福祉士資格取得は業務外の個人的努力の結果
*EPA制度と違い、導入目的を不足人員の穴埋めとの目的のため、当初からキャリアプログラムなど考えていない。
そのため、介護福祉士資格取得など問題意識外。
*ただあるとしても、例えば日常業務と実務者研修と内容が一致させる指導に欠け、あくまでも個人の努力に任せた
*一方現状の介護現場では、介護福祉士資格取得はキャリアアップの必須アイテム
*介護職に対するキャリアプログラムでは、日本の現状で言えば、その登竜門として「介護福祉士資格」取得が位置している。
たとえば施設の管理職要件として、その資格が求められるのが一般的でもある。
そのことは介護福祉士資格が看護師資格と違い業務独占とは違い名称独占に過ぎず、結果キャリアアップの手段として利用されている現状がある。
*だが、多くの事業所は資格取得に向けたプログラムが不在
日本人の場合でも、資格取得はあくまで個人の努力の範囲であり、日常の業務と関連はつけられていない。
*まして外国人介護人材向けの資格取得プログラムなどEPA職員とは違い皆無に近い
*また問題なのは、介護業務の特性からか、はたまた、近年資格取得の大多数を占めることになった実務経験ルート者の3年の実務経験と、業務外に習得しなければならない実務者研修終了の条件のためか、実務者研修のカリキュラムと日常業務が、直接結びつけられていないところにある。
あたかも「それはそれ、あれはあれ」である。
*そのため外国人介護スタッフも、必須項目としてある技能実習計画に基づいた日常業務と介護福祉士資格取得との結びつきが弱く、そのため意識して個々人のキャリアプログラムを作成する必要があった。
しかし、本人も事業所側も技能実習計画に基づいた日常業務をこなすのが精一杯であった。
*だが一方、実感として多くの資格取得者は、利用者、並びにスタッフ間にてその技量、知識においてモデル的にみられている。
また、実践介護の根拠、など他人に説明できる能力は、職業としての介護士にとって必要不可欠のスキルであり、かつ仮に外国人介護人材にとって母国での介護の普及には必要不可欠な知識、スキルでもあるが。
Ⅱ.今必要なことは
受け入れ施設も就労外国人も、目的を4年後に介護福祉士資格取得と明確に持ち、それに向けた体制を作り上げることである
*キャリアプログラムの具体的作成、提示、合意
自事業所にてのキャリアアップ
管理職への道、そのために必要なスキル、資格など具体的に
帰国後の仕事、ミャンマーにおいては、当面介護職としての職場はなさそうなので、例えば日本語教師、送り出し機関への就職、日本的介護教室の教師、など具体的に、かつ実現可能な就職先を紹介など目標を設定、そしてそれに向けた努力を促す。
*キャリアプログラムを作成する前提として、金銭的にも他の業種と同様に充実し、将来の希望が持てる仕事として、出国前から前記職業や介護職等への道筋を明確に示す必要がある
具体的には、努力すれば入国後4年目で介護福祉士資格取得可能な道筋を明確にする。
*第一に着任事業所においての日常業務遂行計画、並びにキャリアアップのためにも有効なカリキュラムを作成する。
またそれを実現するための指導体制の明確化。
*母国における入国前介護研修-入国時介護研修―技能実習計画―実務者研修(初任示す者研修も含む)-介護福祉士資格取得までの、それぞれの一貫性と実務と教育の統一性を具体的に明示する
*日本語能力も入国3年以内にN2以上の能力を持つことのできる仕組みを説明し努力を促す。
*具体的には入国から4年間のカリキュラを作成し、その実現体制を明確に作る。
*また同時にその対象は外国人に限らず日本人スタッフへも同時に保証する
ちなみに、残念ながら全国平均では介護施設の就労者の約4割ぐらいが資格保持者に止まっていて、その現状が介護事業所の現状と、介護職の社会的位置を指し占めているのであろう。
それを称して「介護はだれでも出来る仕事」との社会的評価につながるのであろう。
*我々は施設の基準として、介護現場にて就労するには原則全員介護福祉士資格取得者とするとする。
*EPA介護福祉士候補者が、資格取得を目的に来日しその目的のために努力しても候補者の約65%の合格率であるが、来日時日本語能力がN3以上のベトナムからの候補者は96%が合格している。
*確かに資格取得を目的に来日した人と、出稼ぎとしての目的の人との違いがあり、我々の対象の外国人人材多大な困難と苦労を伴うが、日常業務の中に資格試験合格のための知識を強くして遂行したり指導することにその活路を求めて生きたい。
何よりも、外国人介護人本人とそれを指導する事業所の日常的な努力がそれを可能とするであろう。
それが実現すれば、指導体制、職場の仕事のやり方、社風によりEPA候補者の結果と遜色ない結果を生むのが可能である。
Ⅲ.今や外国人介護人も何らかの介護資格を必要とし始めた。
*前記「見直し検討会」とは別に厚労省にて現在開催されている「外国人材の介護業務の在り方に関する検討会」において
①訪問サービスに外国人労働者に開放
②技能実習生を採用することが出来る事業所の開設3年経過条件の撤廃。
③人員配置基準の就労開始後半年経過既定の改変
など検討されている
*訪問サービスへの解禁問題は、来年の介護の診療報酬改定にて設置が検討されている、訪問系サービスと、通所系サービスが合体した複合サービスの新設問題に適用される。
*訪問サービス事業所に限らず、通所系サービス事業所などにおいても外国人介護人材が訪問サービスも可能となる。
*それが実現すれば、基準によりサービス提供人材は、初任者研修か生活援助従事者研修を受けていなければ業務が出来ず、おのずとそれを必要とする。
*従って施設系介護と違い、何らかのそれに向けた研修が必須となる。
そのため外国人介護スタッフは法定介護研修等が必須となり、その直接的影響も介護施設で就労する外国人介護人材も受けることは容易に想像できます。
*この様に時代は、外国人介護人材枝への育成プログラムを前提とした教育も必須となってきている。
整理すると
*介護職は日常の介護業務実践にそれぞれの根拠を示し、利用者あるいは他の介護人に理解を促し、結果的に利用者の自立促す、プロとしての当たり前の業務実践をしなければならない。
*そのため少なくとも職業としての介護人は、介護福祉士資格の取得は前提なのである。
それは外国人介護スタッフも同様であり、それがあって初めて「外国人介護人材」と呼べるのである。
*そのための作業として
日常業務の指導の際、介護技術の指導に必ずその根拠を説明し、手技の合理性を理解させ他人にその手技の有用性など説明ができる能力を持たせる必要がある。
*そのため、取り合えず実務者研修のカリキュラムと、施設固有の教育としての技術、知識とのの関連相関を意識し、その実践計画と、指導書などの作成を急ごう。
*その結果は4年後に、介護福祉士資格の獲得として現れる様にしよう。
*我々の対象の外国人介護人材は、目的として資金獲得であろうが、同時に介護業務従事の目標の明確化することで希望を持ってもらおう。
*どうも転職希望者の続出問題は、我々の外国人介護スタッフの採用目的の不明確さが起因しているようだ、確かに不足人員の穴埋めが直接的動機であるが、相手も希望と、未来がある若者たちである、採用する我々には共に未来をかたち作る義務があるはずだ。
Ⅳ 検討依頼
*以上の要素を踏まえ確実に実施実現し、結果的に就任から4年後には確実に
介護福祉士資格を取得するために、具体的にタイムスケジュールも含めた計画を立て、それを日常業務とする必要がある。
この間、熊本の会員である社会福祉法人寿量会、天寿園にて実現に向け検討会を重ねてきた、その検討結果を次に報告する
どうぞこの素材を、検討のまな板に乗せますので、深くご検討願います。
以上