持続可能な介護事業所運営の課題(その1 人材確保)

介護人材の国際的循環に向けて 外国人介護職員の常用化に向けて其の2

~熊本県を例に~

2023年5月15日

一般社団法人国際介護人材育成事業団

理事長 金澤 剛

1 はじめに

2023年4月26日、厚労省が50年後の日本の人口が8千700万人、高齢者4割、外国人1割になるとの推計値を発表した。

 

今年3月には、リクルートワークス研究所が2040年には約1千100万人の働き手が不足し、介護サービスは必要な労働力の25,3%が不足すると予測。

 

また、昨年2022年3月には国際協力機構(JICA)が日本のGDP年率1,24%を達成するとしての生産活動を目標値にした場合、2030年には419万、2040年には674万人の外国人労働者を必要とし(図―5、現状の外国人供給量からみれば2030年には63万人、2040年には42万人の不足を生じるとの推計値を発表した。(図―7)JICA調査研究2030年、2040年外国人との共生社会の実現に向けた取り組み)

 

他に、人口減高齢社会化を如実に表す数字としてみれば、身近なところで、死亡数が出生数を超える自然減が長崎県においては2022年に1万1千人に達し、熊本県では1万1496人に達している。

どう見ても日本全体も同様であるが、特に熊本、長崎などの地方は社会増減も含みじり貧が常態化している。

 

そこで、厚労省の示した50年後の日本の人口8千700万人の推計値には外国人が一割加入して初めて達成できる数字であることも含めこのこと等あらためて考えてみよう。

前途多難である

 

<いまだ跋扈する時代錯誤>

先日、熊本市は自治基本条例に外国籍を持った熊本在住の人も熊本市民とする条例変更の制定案にパブリックコメントを求めたところ、多数の反対意見が寄せられ条例変更をあきらめたとの報道があった。

それによると、反対意見の大半が市外、県外からのものであり、はやりの「ネトウヨ」や何らかの組織的動きが推測できる。

この様な「ガラパゴス的人種」は明らかに時代錯誤であり、それよりむしろ時代に取り残されていく人種なのであるが、このような極端な例は別として、我々を含め時代変革にあった感覚を要求しているようである。

それが無ければ厚労省推計の1割の外国人を含んだ将来人口推計達成も危ぶまれるかもしれない。

また、そのような「ガラ系」の能天気な人種は時代の要求から取り残されることも確かな事であり、仮にそれを認めていたら彼らが夢見る「美しい日本」も時代の波に消しさられていくのである。

この様な現実に対し、我々は、今何を準備し、何を具体的に実現しなければならないか多少考えてみよう。

 

以下の項目に従って考察を進めて行きたい。

Ⅱ今後の介護人材の必要度の推計

1 現況、熊本県、熊本市

2 2030年、2040年の日本の外国人労働者の必要量

3 今後の介護人材の必要量

Ⅲ推計必要量を達成するための課題

1 介護職の他産業と広がる賃金格差

2 労働力獲得国際間競争の激化

魅力が劣る来日就労

Ⅳ充足するため、今後何をすべきか

国として、社会全体として

1 外国人労働者受け入れに向けての対策などのパラダイムシフトへ

国是としての移民流入防止策から時代に合った共生社会の実現へ

 

2 さて我々は何をしよう

 

Ⅱ‐1今後の介護人材の必要度の推計

現況、熊本県、熊本市

①熊本県

熊本県外国人就労者数(雇用状況)

14,522人、  (前年比1,509人増)

外国人雇用事業所数

3,189事業所 (前年比125事業所増)

(内訳)

専門的、技術的分野    3,335人(23,0%)

特定活動           588人(4,0%)

技能実習         7,846人(54,0%)

資格外活動(留学、家族滞在) 916人(6,3%)

身分に基づく在留資格   1,837人(12,6%)

 

国籍別外国人労働者割合

ベトナム   5,798人(39,9%)

フィリピン  2,088人(14,4%)

中国     2,039人(14,0%)

インドネシア 1,062人(7,3%)

ネパール     732人(5,0%)

ミャンマー    509人(3,5%)

その他

(2022年10月末法務省在留外国人統計)

②熊本市在住外国人

総数

2020年 6,437人

2022年 7,272人

であり留学、技能実習1号、特定技能1号の資格者増えている

総人口の0,9%程度である。

 ③熊本県技能実習外国人労働者数

7,846人

産業別には

農業、林業   3,131人

建設業     1,028人

製造業     2,562人

情報通信業      10人

卸売業、小売業   563人

宿泊、飲食、     54人

医療、介護     245人

サービスその他   193人

 

(2022年10月熊本労働局)

④技能実習計画認定数

外国人技能実習機構の調査、統計令和3年度版によると

団体管理型技能実習計画認定件数)

 

 

1号

2号

全職種

全国

71,971

58,115

熊本

 1,735

 1,471

介護

全国

 3,984

 4,274

熊本

  45

  99

(図-1)

 

⑤特定技能1号在留許可件数(202212月末)

 

 

 

全職種

全国

130,915

熊本

 16,081

介護

全国

  2,896

熊本

   261

(図―2)

⑥外国人総数の時代変化

 

総数(名)

雇用事業所数(か所)

2013

3,798

1,147

2022

14,522

3,189

増加率

  4.55

  3.31

(熊本労働局)(図―3)

以上が現況である

約10年前と比較すると外国人就労労働者数は飛躍的に増加傾向であるが(図―3)それに比して介護技能実習生の就労人数、雇用事業所数は微増である。(図-1)

熊本県にあっては介護技能実習生の就労は総数の0,3%であり、必要度あるいは困窮度に比して極めて少数の実績であり外国人介護スタッフの認知度がいまだごく少ない点が課題として残る。

介護特定技能労働者も同様。(図―2)

 

 

 

 

Ⅱ―2 2030年、2040年都道府県別の外国人労働者の必要人数    

JICA調査研究報告「2030,2040年の外国人との共生社会の実現に向けて取り組み」によると

 

 

2030

2040

人数

対生産人口比

人数

対生産人口比

必要数

全国

419万人

 

674万人

 

東京

1189千人

11.7%

194万人

18.9

熊本

3万1千人

3.4%

5万人

6.1

供給量

全国

356万人

 

632万人

 

不足数

全国

63万人

 

42万人

 

(図―4)

 

以上の様に、推計によるとあと7年後の2030年には全国にて63万人の外国人労働者が不足し17年後の2040年には42万人が不足する(図―7)。

また必要な外国人労働者数は生産人口比で東京においては約2割、熊本においてもⅠ割弱の必要労働者数である。(図―6)

 

これは、家族数も加えると日本社会は外国に対する真っ当な処遇なしには成り立たないし、また今からその準備を確実に実行しなければ、現在世界で起こっている様な人種対立社会になりかねない、少なくとも先に記した熊本の例などが続けば地域が差別構造に基づく対立社会になりかねないのであろう。

JICA調査研究報告「2030,2040年の外国人との共生社会の実現に向けて取り組み」

Ⅱ-3 介護人材全体の必要量推計等

第8期介護保険事業計画によると

全国

 

65歳以上人口

割合

必要介護職数

不足数

2019

3,588万人

28,4

211万人

 

2025

3,677万人

30,0

243万人

32万人

2040

3,921万人

354

280万人

69万人

(図―8)

熊本県

8期高齢福祉計画、介護保険事業支援計画(長寿、安心、くまもとプラン)

 

高齢化率

介護人材量

人材必要量

不足数

2019

31,1

31,775

 

 

2025

33,2

31,396

33,645

2,248

2040

36,2

30,934

39,341

8,408

 (図―9)

 

 

Ⅲ 必要量を達成するための課題

人材不足の予想はほぼ確定のようだ

そこで対策であるが

*働き方改革にて介護業務の合理化

*ロボットの導入

*介護助手制度の新規策定などによりリタイア年齢層の再就労の促進

等を国が企画している。

*そのほかには外国人人材の活用である。

この様に今後の不足に対する策として、感情労働である介護業務を見直しに等により機械化の導入。

また不足する人材に対しては高齢者の再活用と外国人の若者の招聘にかかっているようだ。

 

だがしかし、少なくとも先に挙げた熊本市の条例制定問題などに生じた事などが常態化するのであれば実現は不可能であろう。

熊本の例など決して特異な事ではない。

日本が国是ともいえるほどの強固さで守り続けてきた外国人排斥の伝統に対し、時代変化の波が押し寄せていることに国民全体が気付く必要が急務となってきている。

 

それがあって外国人の日本産業全体や介護業界への招聘も本格的に可能となるであろう。

 

またそれにも増し特に介護業界では近々の諸物価の高騰、30年ぶりの賃金高額アップの時代 変化はまたしても人材不足に拍車をかける結果となってきている。

その波は、人材不足のみならず倒産数の増加さえ起こしているようだ。

 

それでは対策を検討するためにも現況を俯瞰してみよう。

 

Ⅲ―1 推計必要量を達成するための課題

1 介護職と他の産業とに広がる賃金格差

昨年から顕著になりなじめたガソリンなどの燃料費、生活必需品などを含む生活にかかるすべての物価が2割3割の値上げが常態化しその動きはいまだに収まることが無い。

一方での賃上げ問題

連合の「2023春季生活闘争 第4回回答集計結果」によれば、2023年の平均賃上げ率が3.69% 金額で言えば11,114円の上昇となり30年ぶりの高さであるらしい。

厚生労働省によれば、春闘賃上げ率は1994年(3.13%)以来の3%台となることがほぼ確実で、前年(2.20%)からの改善幅は1%を超え、1980年以降では最大であるらしい。

これは、一般企業や飲食店などのサービス業等は製品、サービス料などに賃上げにかかる費用を転嫁し総じて値上げが生んだ相乗作用の結果なのであろう。

だがしかし国が定めた価格により公費運営されている介護事業等は、そもそも価格を転嫁するすべを持ち合わせていない。

精々診療報酬改定時に要望を出すぐらいである。

それも昨年実施された「介護職員等ベースアップ等支援加算」 新設でも追い付かず次回の改定の2024年医療と介護の同時改定を待つしかないのが現状のようである。

 

福祉医療機構(WAM)が今年4月7日に公表した調査レポート(社会福祉法人経営動向調査)

 

それによると

人材不足に輪をかけての日常経費額の増加が如実の現れ経営の困難性がますます増加している。

 

それは(図-10)のごとく

特養の電気代などの水道光熱費が、昨年の4月から12月の間に、前年同期と比較して20%以上増加した施設 69.240%以上増えた施設が28,7%に挙がっているという。

水道光熱費以外にもガソリン価格や食材料費等のサービス活動費用全体への影響を受けている事業所はほぼ100%に近い97,1%の特養である。

そのことは特養以外の介護事業全体に言える。

全国介護事業者協議会・介護人材政策研究会・日本在宅介護協会の3団体が、全国1277の施設・事業所を対象として今年3月に実施した・物価・光熱水費等の高騰による介護施設・事業所への影響調査 .によるとその対策として

昇給や賞与の見送り・減額という対策の事業者が27.30%もある。

人員削減や新規採用の停止等16,2(図-12)

等人材に関わり、それも1/4以上の介護事業者が賃金カット等を実施していることで

ある。

 

 

(図-11,12,13)

 

これは、明らかに時代の流れと逆行せざるを得ない介護事業の苦しい現実を如実に表している現状なのであろう。

このことは、他産業と介護事業の賃金格差が広がるだけではなく、現在介護事業所に勤めていれば賃金カットされてしまう人が、介護以外の他事業者に転職すれば、賃金が上がるという現実が生まれている可能性が高いことを表している。

それは介護事業からの人材流出が加速する流れが起こることが充分に予測されることでもある。

それでなくとも平成24年から導入された処遇改善加算の2度にわたる実施や昨年に実施された「介護職員等ベースアップ等支援加算」 新設など都合3度にわたる加算制度の実施で縮小されつつあった他産業との賃金格差も、また広がりせっかくコロナ禍等で他産業から流れて来ていた働き手も流れ去り益々の人材不足を生み出す結果が生まれてきている。

その現実は介護事業所には新卒の該当学生の就職先から完全見放され、もはや新規に新卒者を迎い入れる事業体としては絶望的な状況の固定化が完成してきたようである。

また新採用を望んでもスタッフ紹介会社に望みを託すしか無くなり、採用にかかる費用が年々増加する一方の流れは止まることがない。

それは事業活動の結果苦労してようやく絞り出した黒字部分を人材紹介会社に持っていかれる、と嘆いている特養経営者のツブヤキもやけに真実味を帯びて聞こえてくるほどである。

その結果年々スタッフの平均年齢が増し、あたかも老々介護が業界内での実現が現実化しつつあるようである。

それにも増し国が苦肉の策として提唱し始めたリタイア年齢層の活用として「介護助手」制度であるがスタッフの質量の不足に悩む介護現場としては「悪い冗談」としか思えない。

それはともかく、人材不足、活性化の推進、介護能力の向上などの対策としての最後の手立てとして、外国人の若者の招聘に期待を抱かざるを得なくなってきていることも事実である。

 

2―労働力獲得国際間競争の激化

魅力が劣る来日就労

「国際移動転換理論」では、一般的に一人当たりGDPが7千ドルを超えると「出移民」と「入移民」が逆転、それまで出移民国であった国が入移民国になるとの論であるが、確かに日本においても事実のようである。

かつて実習生の最大の送り出し国だった中国は2013年に7千ドルを超えた。

この年に中国人実習生は減少に転じ、2020年末は約63千人とピークから4割以上減った。

其の後ベトナムが第一位の送り出し国になったが、それも2020年に2千785ドル。

仮に過去10年の平均である年7%成長を維持すれば、30年代初めに7千ドルに達する。あと10年ほどで日本行きの希望者が減少するとの予測である。

現実はもはやその動きが開始されつつあるようでもある。

 

(令和4年10月末)の「外国人雇用状況」の届け出状況まとめ

によると

前年比が高い主な国は以下である

*インドネシア  77,889人(前年比+25,079*47,5% 〔前年 52,810人〕

*ミャンマー   47,498人(前年比12,997人・37,7増(前年34,501人)

*ネパール   118,196人(前年比19,936人・20,3%増(前年98,260人)

となり、ベトナムは102%、フイリピン107,8%の伸びに収まったようだ

またベトナムにおける出稼ぎ先はオーストラリア、韓国、台湾などにシフトして円高などで日本はその地位を低下させている。

このことは「出移民」の減少は確かに「国際移動転換理論」そのものであるが「入移民」の条件は国としての魅力度そのものである。

日本は他の迎い入れ国と比較すると賃金上昇率、為替相場等の条件により顕著に魅力を失いつつあり、前記各データーの今後の外国人参入量の保証も危うい状況となりつつあることを予感させる状況である。

日本は現状では労働力の国際間競争に負け続け、今後もその傾向が続きそうなのである。

またそれにも増し問題で、厄介なのは、前記した熊本市でおきた能天気な排外主義的思考がいまだ確固として我々日本人の心の根底にへばりついている事である。

 

Ⅳ 充足するため、今後何をすべきか

国として社会全体として

1外国人労働者受け入れに関してのパラダイムシフト

国是としての移民流入防止から時代に合った共生社会の実現へ

①ご都合主義の期限付き受け入れ政策は終焉させなければならない

前記してきたように、熊本市の条例案に対す「ガラ系」の人種の跋扈問題等の現状から我々は出発しなければならそうなそうである。

言葉を変えれば、「外国人労働者は必要である、だが長居されるのも困る、用が済み次第帰国してもらいたい」など虫の良い風潮からの脱却が今必要とされているようだ。

 

いずれにしても

課題は

先に記した近未来の労働力不足、並びに必要外国人労働者数などはあくまで推計値でありそれを実現、あるいはその数より多く、あるいは少なくするにはそれぞれの要素が想像できる。

その中で例えば外国人労働者に関する推計値も以下の点で不安である。

㋑未来予値の中で在留外国人数などは、現在の在留期間数を使用している点。

㋺外国人労働者の必要量が前提となっている送り出し,或いは供給に関しては現況の状況。

以上の前提の為、実現は別問題。

問題はそれを達成するための現在、そして今後の施策の問題である。

課題を解決するためには、今抱えている外国人スタッフの例に未来に通じる策を具体的に企画実現することが必要であろう。

 

現在までは、永住の道をごく狭め、就労条件の改善をサボタージュしてともかく必要な量と期間を満たすだけの外国人労働者の国内導入策を実施してきた。

そろそろその終焉を必要としている。

現在までの政策はすべて、一時的に外国人労働者を迎い入れことを前提にした施策そのものである。

 

例えば「技能実習制度」である。

本音もその運用も「途上国からの労働力導入策」であるが。

方便として途上国の近代化のための日本の先進技術の移転と、国際貢献。

と銘打っている。

従って外国人労働者を生活者としての受け入れ策では決してない。

そのため在留期間を最長5年として1号2号3号とそれぞれ期限を設けステップアップのために試験を設け合格者を在留させるとした。

しかし現実のその試験は在留希望者、あるいは雇用継続事業者が望めばほぼ全員が合格する試験であり、その制度は実習生側、雇用者がいつでも帰国しやすく、させやすくするために機能しているようだ。

またそれを誘導するための制度でもあるようだ。

また原則3年在留後1か月以上の一時帰国の義務化は長居されないような役割を担っている。

それは実習生には里心を強くする役割として機能させ、雇用者側には1か月以上1年未満の休暇は雇用を打ち切らざるを得ない長さであり、それを機会に契約終了のタイミングとして機能している。

この様に何とかして永住権が発生する原則10年の在留に到達しないよう関連法案に特例をつけるなどしながら、あらゆる努力を国は制度作成の目的の底流に流れているようである。

またこの頃も国連などの勧告を無視してまで入管法の改定を実施し移民の流入をなんとか阻止しようとする伝統を保持しようとしている。

その結果我々も含めて一事が万事外国人の雇用は一時の期間限定雇用策としての認識が常識となっているようだ。

 

②世界第4位の移民受け入れ国日本

伝統的に日本の移民受け入れ拒否の政策は次のような解釈が代表的である。

それは安倍政権が2014年の「日本再興戦略」の中で、「移民政策と誤解されないように配慮し、総合的な検討を進めていく」と表明。

当時、政府は「一定数の外国人を期限を設けずに受け入れ、国を維持するのが移民政策」としている。

それが伝統的解釈であって、今も続いている。

だがしかし、確かに移民に対す国際的基準は無いようだが国連事務局では世界の多くの専門家の基準として以下の考え方を使用し各種データーも公表している。

【移民とは「本人の法的地位や移動の自発性、理由、滞在期間にかかわらず、本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している、または移動したあらゆる人」と定義されている】

その基準により評価すると日本は、経済協力開発機構(OECD)の2019年の移民データーでは、ドイツ、米国、スペインについで世界第4位の移民大国となっている。

だがしかし変わららないのは、日本においては「移民」と「外国人労働者」は別のものとして区別している点である。

今必要なのは、このような現実離れした詭弁を積極的に拒否し、現実を直視した解釈のもと外国人労働者を受け入れることである。

それが無ければ記してきた近未来予測も、ただ必要量の希望数だけの予測に過ぎなくなる。

要は「国際間労働力獲得競争」に敗北するだけの事ではある。

 

時代は「国是」とやらも、少子高齢化人口減社会の確定未来に対し変更を余技されざるを得ないところに追いやられている。

外国人の導入以外に日本の国力の維持、あるいは日本社会の維持そのものも危うい未来図が現実味を帯びている。

また年々激化している国際間労働力争奪戦、あるいはコロナの蔓延で証明された国際間距離、時間軸の崩壊、無力化の進行などもはや国是としての「意識の鎖国状態」からの解放を求めているようだ。

外国人労働者の導入にあたって,言葉を変えていえば文字どおりの移民導入策、あるいは一時的在留、永住の2原論を超えた「生活者」としての区分で色分けした解釈による積極的実施が求められている。外国人労働者等を管理対象から「生活者」としての認識の変更を必要としている。

また

我々介護事業所も外国人労働者は単にスタッフ不足の穴埋めから自事業の有力な戦力として、共に事業の未来を形作る同志として、戦力として位置づける必要が生まれてきている。

その様な考え方の方向転換無しの推計未来などはただの絵物語に終わってしまうのかもしれない。

 

国は外国人介護人材受け入れに関する検討委員会など設置し検討を重ねいくつかの政策提言を行っているが、

それはいずれも議論の前提として、一時滞在の外国人助っ人を前提とした対策、あるいは量的拡大策としか思えない施策の羅列である。

検討の中で不足しているのは「移民」に関する原則的解釈とそれに基づいた労働者受け入れ数とその方法、そしてそれを可能とする日本社会の在り方なのである。

要は今必要なのはこれまでの外国人受け入れにかかる考え方の変革であり、それが無ければ、今後受け入れは困難になり、いくら希望数を羅列しても国際的には無視されて結果実現にほど遠くなるのであろう。

今必要なのは国をあげての外国人労働者、あるいは移民問題に関してのパラダイムシフトであろう。

 

2 さて我々は何をしよう

JICA調査研究2030年、2040年外国人との共生社会の実現に向けた取り組み」報告書によると。

提言として以下の項目が掲げられている

①中長期的見通しを踏まえたビジョン、政策の策定、体制強化

②外国人が日本で就労する魅力向上と発信

③送り出し国における人材育成拡充及び振興送り出し国の開拓

④産業界や地方の人材ニーズにマッチした外国人労働者の受け入れ制度構築

⑤外国人も活躍できるダイバーシティ社会の実現

⑥ダイバーシティ社会を支える日本人の育成、外国人の活躍

である

いずれももっともな事であり、問題なのは先にしつこく記したい外国人の移住永住の解釈変更なのである。

 

2-2戦略的招聘

介護職の人材問題に即して言えば。

確かに他産業と同様現在もそして未来も不足が確定していてそのためにも外国人人材は必要そのものである。

また介護人材国際的循環も必要とされている。

それは人材不足の穴埋めとしての日本の介護現場の需要。

送り出し国からもいれば、いち早く少子高齢化を迎えそれに対処するために生まれてきた日本の「介護」の会得。

それは今後おのずと少子高齢化を迎える送り出し国にとって必要な技能。

また介護の特性としてその国独自の社会環境、状況からの産物、したがって日本にて習得する介護はあくまで日本の介護であって、習得すべき点は介護が生まれる背景等であり、時代、構造の違いの中で生み出し必要となるであろう母国の介護にヒント得ることである。

そのために日本の中で介護がどの様に生まれどの様に役立っているかの現実を習得する人材の育成が重要な要素なのであろう。

そのためにある人は介護福祉士になり日本で永住、またある人は日本の介護を習得しそれを礎にして母国へ介護の形成に必要な人材として育成。

この様な結果を生むためにも言わば外国人人材採用一般から、目的を持った戦略的招聘が必要となりつつある。

そのためにも外国人移住問題も移民か一時的在留かの2原論を超えた複合的な概念の変更など必要としてきている。

このことは現在でもグルーバルな事業を実施している企業あるいは技能実習制度上の企業単独型にて労働者を採用している中の企業のうち一部企業では既にごく当たり前の様に、ごく普通な日常と化している。

 

2-3外国人採用事業所地域協議会(仮称)の設立

①雇用、就労責任を果たせる体制が必要である。

我々は技能実習制度等を利用して外国人労働者を採用している。

その結果現状では、雇用責任と就労者としての義務責任などが両者とも曖昧になり監理団体にそれを依存する傾向が強くなっている。

その結果将来のための課題が生まれてきている。

現状では、課題問題などの所在発見、解決方法などが当事者間の直接的アプローチに結びにくく、現実から生まれる課題、問題など直接の解決方法を模索する機会を逃がしがちになり今後に繋がるノウハウの蓄積を逃しがちである。点である

その結果今後の雇用の為にも役立つ課題、そしてその解決方法などの事例の蓄積の機会を逃すことになっている。

そのことに代表されるように現制度では単に外国人労働者の一時的雇用であり、雇用される側も出稼ぎそのものである。

そこには今後必要とされている移住永住などの外国人を常用するためのノウハウなどが生まれない。

また、特定技能制度も認定登録機関が受け入れ事業所の代理機関としての位置づけであるが、現実的には結果的に監理団体と同列の様に運用されやはり依存体質を生み出している。

 

②外国人就労者を生活者として見ることが出来る社会をつくる。

たとえば同じ地区の同じ業種の事業所に外国人技能実習労働者が就労していても、雇用者も就労者も日常的な付き合い、あるいは関係など極めて薄く無いに等しいのが現実である。

それはあくまで雇用者側、就労者側も直接関係を持つのが監理団体であるからである、そのため地域的関係を持つ必要が無いのである。

これでは今後移住、永住が必要な永続関係の樹立が必要な社会の到来には適した体制を作ることはできない。

なぜならば、今後常用を可能としてそれを保証するには外国人労働者を「生活者」として社会全体が認め、それを基礎とした地域社会を必要としているからである。

 

③外国人労働者を常用できる体制を作る事

例えば、外国人介護人材などは今のところ転籍不可の技能実習制度により就業を強制できる。

しかし現在検討中の制度改革により、転籍の自由が実現し職場の流動化が生じる、そのことは外国人労働者から選ばれる職場、選ばれる地域が優位になる。

そのことは、育成に努力した事業所には外国人職員が事業体の中心勢力として活躍する可能性を含むのである。

またそうしなければ最後の人材供給である外国人から遠ざかられ先行きが見えなくなる。

逆に育成に成功すれば優秀な人材により未来の運営に夢を見ることが出来る。

外国人スタッフの常用とその人材育成に努力がすべてであろう。

先に現在の外国人採用の現状は、採用される方も、する方も不足人材の穴埋め、一方で出稼ぎとの関係に過ぎず時代変化などにより事態はいつでも変わる可能性が含まれると記してきた。

そろそろその体制に終止符を押さなければ未来は見えてこない。

そこで外国人スタッフを常用できる体制の確立。

そのためには採用する側もされる側も日本人との差別を解消をしなければならない。例えば同条件の保証を就業規則で謳うなど。

そこから整備しなければならない。

一方で単に期限を定めた出稼ぎから、キャリアプログラムに乗った就労計画を実施しながら事業体にとって不可欠な人材として積極的な就労意思を保証できる体制などを必要としているのであろう

そのためにも常用できる体制の確立が急務である。

 

④外国人労働者中央集中化対傾向策定の必要性

現在技能実習制度の見直し作業が国で行われ今秋にも結論が公表されるらしい。

先の中間報告によると、新聞の題字風に言えば「技能実習制度の廃止を含めて新たな制度」提案。

とのことである。

だがしかし中身をよく見れば、中身はほぼ変わらず、ただ表題を変えるぐらいにしか見えてこない。

その中で変わりそうなのは技能実習制度の元凶である「転職、転籍不可」の項目であろう。

どう変わるかは別として、ある程度転職、転籍の自由は確保されていくであろう。

すると、やはり外国人労働者の中央、都会集中の流れは当然のことである。

現在転職、転籍の自由が確保されている特定技能制度の実績を見てもやはりその流れは実際起きているようだ。

昨年の例を見ると

介護特定技能1号の資格取得者は、昨年の場合のほぼ全員が技能実習2号終了者が占めている。

調べると

埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県のいわゆる中央あるいは大都会に就労する介護特定技能者数は全国の54,1%(出入国在留管理庁令和4年12月)

介護技能実習2号の団体管理型研修計画認可数は全国の41,4%(外国人技能実習機構令和3年度統計)である

まだ開始されて間もなく制度の認識が広がっていない状態においても中央集中の流れが確かに起こってきている。

これでは以前から懸念されていたように地方の不足は拍車をかける一方である。

これ等の当面多々出てくる課題の中の解決手段として例えば、先に掲げたJICA調査研究報告の提言の中に注目に値する項目が提案されている

それは

 「自治体が責任を持つ、就労自由度の高い在留資格の創設等

今後拡大が予想される特定技能制度は、転職が可能な制度である。労働者の人権擁護という意味からは大きな前進と言えるが、最低賃金の低い地域にとって、外国人労働者の流出のリスクが大きく、既に大都市圏への転職などのケースが増えていると報告されている。外国人労働者の受入れは、一定の技能を持った労働者を受け入れる制度であるため、職種別の制度となっているが、地方における人材確保の制度として、季節労働が発生しやすい地域特性や地域の潜在ニーズに合わせ、地域限定(他方、転職の自由度大)の在留資格「地方創生」を創設し、まず特区として、外国

人労働者をしっかり受け入れる地元企業等を認証し、多文化共生の取り組みも地域をあげて行うなどの体制が整備されている地域を対象に実施し、受入れ状況(満足度・失踪率等)により、「地方創生」の枠を増減するのも一案である」

との提案である。

以上のような課題に対処するためにも「外国人採用事業所地域協議会(仮称)」の設立を提案する。

現在我々一般社団法国際介護人材育成事業団は九州ブロックとして熊本地区を中心に活動を日常化している。

今後は今まで検討し記してきた近未来の到来が推測できる。

また現況もそれに向けた体制を作り上げることが急務となっている。

現実的には事業団が関わってミャンマーからの外国人介護人材を第一次から第五次まで、そして来年には第六次の就労者を迎えることとなっている、そして今後も永続することを強く望んでいる。

また実績もある人は介護福祉士資格を取得し、ある人は採用事業所でリーダー職として将来の主要メンバーに登用され、またある人は国に帰って日本に実習生を送り出す業務の開拓を企画する人材に育てあがってきた。

だがしかし今後は確かに前記してきた課題が高いハードルとして立ちはかっているようだ。

しかしそれは、我々が該当外国人を単に一時的助っ人としての単純労働者としての位置づけから生活者として位置づけ直すことにより超えることが出来ると確信を得ることが出来る。

そのため熊本地区に介護職を含め、可能であれば他の産業に従事する外国人労働者を採用している事業所の連絡協議会を組織し、今生起し今後起きるであろう問題課題を共に解決し、外国人労働者が生価値者として共に共生できる地域を作り上げることを急務としたい。

そのための呼びかけを急ぎたいものだ。

以上