母国の介護必要度にあった技能実習を

「介護人材の国際的循環」の実現をあらためて考える

 

 2021年8月25日

一般社団法人国際介護人材育成事業団

理事長 金澤剛

 

はじめに

 一般社団法人国際介護人材育成事業団(事業団と呼ぶ)は、その開設目的に介護人材の国際的循環を掲げた。

 全国の介護現場を運営する有志が集い会を開設したこともあって、日々苦戦していた介護人材不足に対する策として開設した思いも強かった。

それは、介護が必要な、あるいはそのうち必要になる国々の若者を採用し、OJT 方式をもって教育し、日本で培ってきた介護を母国に待ち帰る、そのことを通して事業団の目的を達成するための第一歩と想定したのであった。

 かつ、当然人材不足対策にも役立つと思ってのことでもあるが。

その手段として、取りあえず「技能実習制度」を利用したのであった。

 

 介護が必要となる社会の出現は、国の経済発展、農村型社会の崩壊、平均所帯人数の減少、高齢化などの進捗を図る指数に強く表れる

 それは、我々の言う介護は家事としての介護から、社会全体でこなしていく社会的業務としての介護であるため、ごく当然のことでもあるのだが。

 主に我々が対象とするアジア諸国、特に南アジア、東南アジアはもともと米作を基幹にした農村型地域社会であり、それが経済発展とともに労働者の排出基地として機能した結果、都市への人口集中が起こり、農村型地域社会の崩壊が生じたのであった。

 そうであるがために先の3要素との関連が発生するのは当たり前であるが。

 その時代的変化の物差として3要素に注目したのである。

 今、我々は、その指数をみることにより、送り出し国の介護の必要度を図り、それに合致した介護の伝習を意図して図らなければならない。

 なぜならば、海外出稼ぎの必要度も当然国の経済発展に強く起因して、その発展とともにその必要性も薄れる、同時にそれは、国の介護の必要度も増すことなのである。

 実習生を迎い入れるにあたって、その必要にあった実習を計画実施する必要がある。

 現況の技能実習制度は、たてまえと違い単純に不足労働者の充足を目的とするため、実際のところ、帰国後のことは埒外に考えていることも事実であるが。

 

 開設後6年にして、第一期技能実習生の第一期の実習が来春に終了。

ある者は残りさらに就労、実習を続ける、ある者は帰国し実習の成果を母国に披露する段階に来た。

そのことは、事業団が初めてその目的達成が現実的に問われることとなり始めたことでもある。

その段階になり、あらためて目的達成のために先に記したことを強く意識した対処を必要とするようだ。

 

そこで、改めて、そのことを明確にしてみよう。

以下の項目に従って、論を進めてみよう。

 

Ⅰ 国が想定する日本の介護人材不足の予測と対策

 

Ⅱ 外国人材受け入れ環境の点検 

   2 技能実習制度はそろそろ機能不全を起こしそうだ。

   3 送り出し国の国策としての海外出稼ぎ

   4 受け入れ側の事情

 

Ⅲ 送り出し国はいつまで送り出し可能なのか

   1 経済発展と海外出稼ぎ 平均世帯人数、一人当たりのGDP額、高齢化率、の3要素

   2 出稼ぎの終了と介護を必要とする社会の到来

 

Ⅳ 母国に必要な介護とは

 

Ⅴ 終わりに

  2 介護人材の国際的循環の萌芽は始まっている

 

その結果

果たして送り出し国それぞれに合致した技能実習は何か、

あるいは何が、またどうすれば循環は可能になるのか、またその要素は何か、などの疑問に答え始めてみよう。

 

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