特別寄稿~社会福祉法人立命会 「しらゆりの園たより」(2021年1月新年号)の転載~

 

自立支援介護と医療支援

――低酸素と貧血の改善の重要性について――

 

医療法人 信山会 南城つはこクリニック

理事長・院長 小山信二

 

 新年あけましておめでとうございます。今年が皆様にとって良い年となるように祈念します。新年号に、自立支援介護と医療支援の必要性、特に、低酸素と貧血の改善の重要性についてお伝えしようと思います。

 先日、「オートファジーの仕組みの解明」により2016年のノーベル医学生理学賞を受賞した大隅良典先生の講演をオンラインで聞きました。先生は、「組織に酸素運搬を担う赤血球は1秒間に何個作られるか?」と問かけました。新年早々、頭の体操ですが、答えは毎秒約300万個作られるということでした(私の考察を文末に示しました*)。

 タンパク質も毎日の食事から摂るだけでは足りないので、自己の細胞内たんぱく質を分解(オートファジー)して、できたアミノ酸から新たに必要なたんぱく質を作り、生命体を維持しているということです。私達の身体は、このように、食事から摂りいれると同時に、体内のたんぱく質をオートファジーで分解新生して生命活動を営んでいるといえます。

人は高齢になっていくと加齢とともにフレイル(虚弱=廃用症候群)が進行していきます。しらゆりの園では、竹内先生の4大ケア、水、飯(栄養)、糞(排泄)、運動という自立支援介護に取り組んで、フレイルの進行防止に努めています。自立支援介護は、利用者に負荷をかけて、介護にリハビリテーションの要素があり、フレイルを防止します。

 私は、負荷がかかる自立支援介護には酸素が重要であると気づきました。低酸素負荷を改善する代償機能が弱まっている方が、気管支炎や喘息など、また、尿路感染症など発熱などの病態を起こすと、すぐに低酸素状態に陥り、吸入酸素濃度を上げないと回復するのが困難になります。そういう方には、低酸素になったときに、在宅酸素を導入せざるを得ませんが、驚いたことに、在宅酸素の機械を導入して、吸入酸素濃度を上げておくことで、その後、気管支炎や喘息発作を起こさなくなり、負荷に対して強くなるということです。

 最近、しらゆりの園利用者に在宅酸素の人が増えていると、気付かれている方もいらっしゃると思います。酸素を投与し、低酸素を防止すれば、感染症などに対して強くなり、生命は安全になります。以前は、看取りの時に酸素を導入していましたが、酸素の重要さは、自立支援介護の時、歩行やリハビリテーションの時にこそ意味があります。

 また、貧血が低酸素の原因の方には、貧血の改善が重要です。貧血の原因となる、鉄欠乏、低ビタミンB12、低葉酸、低亜鉛、腎機能障害などに対して、適切な治療が必要です。自立支援介護に低酸素や貧血の改善といった医療支援が重要であるとご理解していただけましたか?しらゆりの園の利用者が尊厳ある生活が1日でも長く送れるように、今年も一緒に頑張っていきましょう。よろしくお願いいたします。

 

*血液量は体重1kgにつき約80mL。体重70kgの男の場合ですと、5.6Lの血液が流れている。赤血球数は、男:500万個/mm3と考えると、70kg男:血液量5.6L=5600cm3=5600000mm3、全赤血球数は、5000000×56000000個。赤血球の寿命は約120日で、120×24×60×60秒で、壊れていくので、1秒間に造られる赤血球数は=280×1011÷(1.0368×107)=約300万個/秒